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マラソントレーニング計画・メニューー23 LSD

快体健,効果的なマラソントレーニング。LSD

※このレクチャーは、マラソン等長距離走においてレース完走や自己記録の更新または維持という走力向上を目標においている市民ランナーを対象としたものです。

LSD(Long slow distance)、ロングペース走、スピード練習

マラソンの走力向上は、より速く走れるようになることと、より長く走り続けられるようになることです。補強運動やランニングフォームの改善、動き作りなど多様なトレーニングがありますが、メインは走るトレーニング。
そこで重要なのが、走るトレーニングのバリエーションの中の主な3つです。

  • ロングペース走:レースペースを軸とした総合力の向上、レースシミュレーションとしての走力把握
  • LSD:遅い速度で長く走る
  • スピード練習:短い距離でも速い走り

大雑把に言うと、LSDで培った基盤にスピード練習を載せることで、間に位置するマラソンのレーススピードでの持久力が向上するという考え方です。
速く走れるようになった余裕を持久力に生かし、長く走れるようになった余裕をスピードに生かす相乗効果という考え方もあります。

ロングペース走については、過去のレクチャーで3回に分けてとり上げておりますのでご参照ください。今回はLSDについて。スピード練習についてはその後に展開してまいります。

LSDの目的・効果

マラソンランナーとして必要な「長く走り続けられる身体作り」が主な目的になります。
力強く(速く)走ることに必要なエネルギー源の糖は貯蔵量に限りがあるので、なるべく脂肪をエネルギーとして走る代謝のサイクルを身体に浸み込ませてゆきます。また、毛細血管を発達させることにより酸素供給が促進され、疲労を軽減させながら楽に走れる身体作りが期待されます。
それらに適した負荷が「ゆっくり」であり、長時間の運動によって叶えられます。
さらに「足づくり」などと呼ばれるように、長く走り続けられる筋肉などの組織作りの効果もあります。
また、市民ランナーを対象にしたLSDに関するアンケート結果では、その実感効果として、長い距離に対するメンタル的な不安の払拭や粘り強さの養成という回答も多く見受けられました。

LSDの定義(オリジナルのLSDは・・・)

Long slow distance・・・文字通り、長い距離をゆっくり走るトレーニングの略称で、マラソンやサイクリングなど有酸素持久力トレーニングの一形態です。

LSD(Long Slow Distance)は、1969年にジョー・ヘンダ―ソン氏の『LSD-The Humane Way to Train』によって、その名称とともに提唱されました。
それから50年後の2019年に、雑誌『ランニングの世界』の編集委員である北島政明氏が承諾をいただいて翻訳されたものを読み、私も編集委員の一人としてヘンダーソン氏に質問させていただく機会もいただきました。

広く、マラソンのトレーニングメニューの王道の一つとして位置づけられているLSDですが、この、いわばオリジナルのLSDを学び直してみると、私たちがとらえているLSDは狭い領域のものであることを思い知らされます。
ヘンダーソン氏は当時、次のように述べています。

「LSDは単なるトレーニング方法なのではない。それはスポーツというものの本質をどうとらえるかという問題なのだ。LSDを行う人にとってランニングは楽しい経験となる。」

この、ヘンダーソン氏が提唱されたLSDの本質と、歴史上のコーチや学者らのトレーニング理論につきましては、回を改めて取り上げてゆきたいと思います。
本ブログの連載ではマラソントレーニング一つのメニューと割り切ってレクチャーを進めてまいります。

LSDの実践

LSDの走る速さ(負荷の設定)

最大心拍数の65%前後
私はこのあたりかと思います。
速すぎても遅すぎてもいけません。(=狙っている効果が減少します)「同じ時間、距離なら速い方が良い」という勘違いはされないように・・・。

運動強度(最大心拍数)に対する割合と脂肪燃焼量

心拍数が指標ですから、走るコースのアップダウンによってはスピードが変化するのが当然です。
また、走り始めからしばらくは例えば平坦なコースで同じ心拍ゾーンで走っているときの速さ(=1キロ何分何秒か)は安定しますが、気象条件の変化や疲労によってスピードが落ちることになります。この場合においても心拍レベルは維持されなければなりませんから、スピードが落ちたとしても気にしなくて結構です。淡々と最大心拍数の65%程度を刻みましょう!

運動時におけるエネルギー源の割合
最大心拍数について

自分の最大心拍数がわかりません・・・?

最大心拍数は何回かの実測で探してゆきましょう
キツイ走り、追い込んだ走りをしなければなりませんが、こればっかりはしょうがないですね。

[220-年齢・・・]といった公式もありますが、年代や年齢毎の一般的な健康指標を論じているわけではなく、個々に適した指標でなければ精度の的確なトレーニングに至りません
スピード練習におけるチャレンジ領域での心拍数や、ロングペース走において終盤頑張った時に出る心拍数が相当してきます。

心拍計の精度、調子?にもよりますので、数少ない測定値に決め込まず、数回の測定での平均値を更新してそれと見なしてゆくのが良いと思います。

初心者の方やスピード練習を行わないランナーにおいては、最大心拍数を測定するためだけにいきなり速いスピードで走るのは故障のリスクが高いのでお勧めできません。
リスクが低い実測方法としては、上り坂を走ることです。傾斜が緩くても距離が長かったり、短ければ上り下りを反復したりするとキツくなってきます。バイクで緩やかに負荷を上げて測るのもありです。
いずれにしても故障しないように注意してください!

次に該当する人は、強度を追い込むことが難儀なので、計測値は真の最大よりも低めに留まると思われます。
{中高年、運動経験の少ない人、のんびり派、負けず嫌いじゃない人}

LSDの走る時間・距離

最終的(目標レースに臨む頃)には、2時間30分以上、フルマラソン4時間以内のランナーならば3~4時間以上

  • 「フルマラソンを歩かずに完走するにはハーフマラソンで2時間30分以内の走力が必要」という考えに基づいた場合、そこまでは走り切れる走力があるという前提ですから、ハーフマラソンレースよりも遅いスピードで、それより長く走れる身体に慣れてゆくということです。
  • 市民ランナーのマラソンレースペースにおいて、顕著にペースダウンが始まるのが25~30km周辺…およそ2時間30分の地点からです。そこからの粘る力を養成する意味においても2時間30分以上が一つの指標です。
  • サブスリー、サブフォーのランナーは、レースより遅いペースであれば、それより長く走ることができて当然といえます。現走力の向上には3~4時間以上のLSDが望まれます。

脂肪燃焼の効果は30分から1時間にかけて漸増し、さらに長い時間を続けることで緩いながらも効果が上積みされてゆきます。

走る量は距離ではなく時間で計画、実施、管理します。コースのアップダウンや気象条件などの影響をうけて速さ(ペース)は変化しますので、距離は適確な負荷の管理、精度の高い成果の把握、分析に至りません。

LSDの実践時期・頻度

どんなトレーニングメニューにも言えますが、効果を生み、実感・把握してその先に生かすには、定期性と継続性が重要です。

実践時期

マラソンランナーであれば、頻度や時間は少なめでも定期的に取り組みましょう。

1年間のトレーニング計画における期分けとしては、冬に勝負レースがある場合は身体の土台作りとして春に多めに取り組み、夏が過ぎる頃からは、ロングペース走の練習日とバランスを取りながら定期的に取行うのが良いでしょう。
「暑い夏は長いのはやらない・・・」ではなく、早朝に走ったり、涼しい山河に赴いてゆっくりトレイルランニング、ウォーキングのスタイルで実践したりして、春に培った基盤を維持してゆきましょう。

また、スローランニングのメリットはマラソンの走力向上にむけた脂肪燃焼効果にとどまらず、ゆっくりだからこそ分かるランニングフォームへの新たな気付きがあったり、自律神経やホルモンバランスを整える効果、散策ランとしての楽しみ、リフレッシュ効果も期待できたりしますから、季節に関わらず行うことをお勧めします。

実践頻度

1~3週間に1回程度
期分けにおけるその時期のテーマや、走る頻度、他のトレーニングメニューとのバランスにも依りますが、実施日の間を開けすぎると、1回のLSDの走行時間を増してゆくことが難しくなります。

快体健,効果的なマラソントレーニング。LSD

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