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厚底シューズについて語ります!(4/9 追加・更新)

厚底シューズについて,カーボンプレートシューズ

「初めて厚底シューズでフルマラソンに臨んだところ、後半から大腿四頭筋が張をうったえ、レース後も筋肉痛が続いた。」というランナーがいらっしゃいました。
また、コロナ禍を経て久しぶりにマラソンレースに参戦するランナーが増えてきたこの秋から、オーダーメイドインソール依頼の理由に「厚底シューズのフィッティングがどうもしっくりこない」というランナーが見られるようになってきました。
厚底シューズが世にお披露目されたのは2016年リオオリンピックの男子マラソンにおけるナイキ社のプロトタイプと言われており、それから約10年、厚底シューズは日本のマラソン界においてもエリートランナーのみならず、市民ランナーの世界でも主流になったと言えそうです。
どなたかが言っていました――「薄底シューズはもはや絶滅危惧種の途なのか?」……そうなる、もはやなりかけていると言えるのではないでしょうか。良し悪しはともかく、売れないものは作られない・・・廃れゆくということのようです。

ということで、圧底シューズのフィッティングや活用に悩むランナーから薄底フリークのランナーまで、今後、厚底シューズで快適に走れるような助言ができれば幸いです。一般論に私的考察を交えながら、なるべく簡潔に優しい表現を心がけたいと思います。

「自分が知りたいことは別」、「自分のシューズ、フォーム、インソールはどうなんだ?」、「早く、詳しく知りたい」という方はパーソナルサポートでカウンセリング、レッスンなどをご利用ください。

前置きが長くなりました。まずは、厚底シューズへの理解ということで、速くなるメカニズムとそれを享受できる走り方についてです。

目次

厚底シューズで速くなる理由

厚底シューズの特徴は、カーボンプレート等の跳ね返りによる前への推進力と後足部から前足部にかけてのローリングがもたらす重心の移動にともなう推進力の増進により、速く走れることにあります。

しかしながら、圧底シューズを履くことによって、どんなランナーでも、ランニングフォームや身体特徴に関係なく速く走れるわけではありません。

厚底シューズならではの推進力を得るためには、走り方に二つの条件があります。

着地の仕方に見る厚底シューズのメリットを享受できる走り方

シューズの接地の部位

着地の仕方、シューズの接地の部位(踵寄り=リアフット、前足部寄り=フォアフット、足裏全体=ミッドフット)において、できるだけ前寄りであることが求められます。
前寄りであれば反発とローリング機能は瞬時に前への推進力に変換されますが、後ろ寄りになるほど長くなる接地時間がブレーキとなり、重心が後ろに残るほどに反発力は前ではなく上に逃げて無駄な上下動をもたらし、前へ進まない走りとなってしまいます。

ブレ、癖の少ない安定した着地

ブレ、癖の少ない安定した着地ができていることが必要です。
厚底シューズは地面から足までの高さが薄底シューズに比べて高く、多くのモデルでは後足部の足幅は特に狭くなっています。そしてクッション性も高いです。
このため、接地において足が外側に傾いたり(内反位)、内側へ捩じられたり(回内)する動きが強いほどに、接地部を支点とした重心の位置が進行方向の前ではなく、外側や内側にズレることで、膝や骨盤、上体の無駄な動きとなり、前への推進力を得ることができません。また、故障のリスクにもなります。

冒頭にも書きましたが、「自分が知りたいことは別」、「自分のシューズ、フォーム、インソールはどうなんだ?」、「早く、詳しく知りたい」という方はパーソナルサポートでカウンセリング、レッスンなどをご利用ください。

カーボンプレートが入ってなければ、いわゆる厚底シューズとは違いますか?

「カーボンプレートが入ってなければ、いわゆる厚底シューズとは違いますか?」という質問をいただきました。大事なポイントなので、大前提「厚底シューズとは」・・・この解説をいたします。

厚底シューズとは

厚底シューズの定義、基準は?

定義も、厚さ(高さ)の判断基準もありません。
90年代後半から流行ったレディスのサンダルやロンドンブーツの類も、単に靴底が厚いという点において厚底靴と言えます。
現代のランニングシューズにおいても同様に、厚さ(高さ)の基準がなく、材質や機能を問わず、各自の見た目や感覚で多くの「厚底シューズ」が存在しています。厳密な定義を唱える人がいたとしても、これが実情です。

厚底シューズの誕生と市場拡大

厚底のランニングシューズの誕生は、大きな床反力と前への推進力をこれまで以上に生むためにカーボンプレートという素材を靴底に埋め込むため、これまでにない厚さが必要になったことに依るのですが、カーボンプレートを搭載しているシューズは全モデルの中では少数に過ぎません
ランニングシューズの市場では、もはや多くのモデルが厚底になっています。
多くの厚底シューズにカーボンプレートが入っていないにもかかわらず厚底シューズが席捲することになったのは、ひとえに、「遅いよりは速いほうが良い」というランニングにおける普通でメジャーな価値観と、「売れるものを市場に出す」というメーカーの姿勢が相まった結果といえます。速さを追求しないエントリーモデルでさえ、今やモデルチェンジをして厚底になっています。
厚さ(高さ)に注目される一方で、素材、機能、デザインなどが軽視されたまま価格が高い製品があることや、今後、厚底ではないランニングシューズが無くなる傾向にあることは残念です。
厚底ではないシューズでトップクラスのランナーの新記録や記録更新が連発されない限りはこの傾向が続くと思われます。

厚底ランニングシューズの特徴

厚底シューズにはいくつかの特徴があります。厚底ではないシューズに比べて変化した傾向も含めて紹介します。押さえておきたいことは、底が厚い(高い)という特徴以外は、すべてのモデルに当てはまらないということです。

  • 底が厚い(高い):共通した特徴、カーボンプレートの有無を問わず
  • カーボンプレートの搭載で反発性に富む:数モデルに限定される
  • ローリングしやすい:踵からつま先にかけて体重が移動しやすい形状
  • 軽量化:厚底の体積に準じて増加することになる重量の増加を抑えるために、素材とデザインの工夫で質量あたりの重さが軽量化
  • クッション性に富む:底に採用した素材の性質と、厚くなった分、クッション性が増大
  • 全体的に柔らかく捩じれやすい:素材の特性、組合わせ方、形状などによる
  • ヒールカップの簡素化:前寄りの着地、素早い体重移動のランニングフォームを前提とするために、後足部の安定性が軽視されたことによる
  • アッパーの簡素化:全体のホールド感や耐久性よりも軽量化を優先させたことによる
  • インソールにおいてカップインタイプではない:足を包むような形状で取り外しが容易にできるカップインタイプではなく、薄くて簡素なものが貼り付けられているタイプが見られる。ハイエンドモデルになるほどその傾向が強い
左:貼り付けられた薄いインソールを剥がして外したもの 右:取り外したカップインタイプのインソール
貼り付けタイプのインソールの注意
  • 取り外さないでその上に別のインソールを重ねて使用しない
    これは、カップインタイプについても言えることですが、足が収まる部分の体積、スペースが小さくなりますので全体的にキツくなります。「取り外しができないからむしろ入れてもよい」ということにはなりません。
    そもそも市販のインソールは前足部のカットである程度のサイズ調整はできますが、足のカーブと中・後足部の幅や立体的な傾斜がシューズと合わないので、フィッティングとしてはマイナスで効果が得にくかったり、故障のリスクになったりします。
    ※承知の上で重ねて利用するのが自身に合っているという場合はその限りではありません。
  • 接着剤で中に貼り付けられたインソールが剥がれない場合は無理に剥がさない
    これは、シューズのモデルや個体差で、軽く引っ張ってキレイに剥がせる場合もありますが、強い粘着力と粘着面積で簡単に剥がせない場合も少なくありません。力づくで無理に剥がそうとすると部分的に底にデコボコの跡が付いたり、縫い糸が切断されたりして着用に支障が出てしまうことになりかねません。
    ちなみに、快体健歩ではオーダーメイドインソールのお客様には専用の液剤を使って剥がしてさあしあげております。

厚底ランニングシューズのメリット・デメリット

厚底ランニングシューズのメリット

冒頭でも簡単に述べましたが、そのメカニズムにより記録の更新が期待できるということにつきます。これについては、ランニングエコノミー(走の経済性)が向上することによるというのが本筋ですが、私見として、クッション性の向上によって繰り返される着地衝撃による筋疲労が軽減されて、マラソンなど長距離において後半まで脚筋力が保持できるようになったというケースも少なからずあるように思います。

厚底ランニングシューズのデメリット

  • 全般的な耐久性の低下:軽量化やクッション性を重視した素材やデザインによる
  • 安定性に欠ける:高さがあり、柔らかく、ホールド性に乏しく、捩じれやすい点で安定性に欠けることで故障リスクにつながる
  • 慣れない負荷による故障リスク:厚底ではなかった場合と比べて、フォームやストライドが変わったり、異なった部位への負荷、よりスピードを増した負荷を受けたりすることが故障リスクとなる。利用に慣れるにつれて解消できるかについては様々な見解があるようで、現段階では何とも言えません。
  • 価格が高い:新しい素材や技術、デザインなどを採用するに必要な分のコスト増は理解しやすいが、「単に厚くなったのでコストが上がった」、「無理やり価格帯を上げるための仕様にした」みたいな印象も拭えません

先にも述べましたが、これらの特徴や傾向は、「底が厚い」ということ以外は当てはまるモデルと当てはまらないモデルがあります。「厚底シューズだから速い」とも「故障しやすい」とも一概には言えません。
どんなランナー(筋肉、足形、etc)が、どんなフォーム(重心移動、着地、etc.)でどの程度(距離や速さ)走ったかによって評価(=その特徴のメリット、デメリットを受けたか否か)は変わってきます。

そうした中でも、カーボンプレートの有無は明確な特徴で速さにつながる大きなポイントなので、利用と評価においてはノンカーボンと分けて考える方がよいでしょう。
近年では、明確に「カーボン(プレート)シューズ」という言葉を用いるようになってきた感があります。
厚底が当たり前で、カーボンか、ノンカーボンか、さらにフルカーボンか・・・こうした分け方、呼び方になってくるのかもしれません。

カーボンプレートシューズでどれほど速く走れるのか?

カーボンプレートランニングシューズによる効果

米国でのとある研究では、カーボンプレートランニングシューズとカーボンプレートを搭載しない従来のシューズで比べた場合、10km走におけるエネルギー消費量は4%の削減、走行速度では3.4%の向上があったとされています。
日本での日本人ランナーを被験者とした実験においても、ランニングエコノミーが5.7%改善したという結果があります。
すべての被験者において向上したわけではありませんが、その優位性は認められるところです。

走行速度3%

ちなみに、走行速度の3%は記録にして何分何秒に該当するでしょうか・・・。

10km 40分00秒の3%は1分12秒なので38分48秒に更新
10km 50分00秒の3%は1分30秒なので48分30秒に更新
10km 60分00秒の3%は1分48秒なので58分12秒に更新

さらに、これを持久係数を使ってフルマラソンに該当させると・・・

ここでは、快体健歩佐々木の独自係数の中から、10km→フルマラソンの持久係数の中間値4.82を用います

10km 40分00秒…フル3時間12分48秒 → 3時間07分01秒に5分47秒の更新
10km 50分00秒…フル4時間01分00秒 → 3時間53分46秒に7分14秒の更新
10km 60分00秒…フル4時間49分12秒 → 4時間40分31秒に8分41秒の更新

凄いですね!
勝負の世界を走るアスリートは後れをとるわけにはいきませんから、履かずにはいられないということになります。
市民ランナーにとってはどうでしょう?
たとえばサブスリーの一歩手前で記録が頭打ちになっているランナーにとっての5分の更新や、サブフォーの一歩手前のランナーにとっての7分の更新は決して簡単なことではありません。
自己ベストの更新や速さへの関心はモチベーションや目的に関わる大きなテーマですから、多くのランナーが履いてみたいと思うのは頷けることです。

一方で、記録の更新は嬉しいけれどカーボンプレートシューズのおかげでありトレーニングの成果、(=走力の向上)がわからないから「厚底シューズに踏み切れない」というランナーの気持ちもよく分かります。

厚底ランニングシューズを履いて記録が伸びた場合、自分の練習の成果がどうだったのかがわからない・・・。

次回はシューズの記録への関与度評価の調べ方について取り上げる予定です。

厚底シューズについて,カーボンプレートシューズ

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