※このレクチャーは、マラソン等長距離走においてレース完走や自己記録の更新または維持という走力向上を目標においている市民ランナーを対象としたものです。
距離と速さの設定
基本的な考え方
わかりやすさ優先でアバウトに言えば・・・
「距離20km以上フル未満で、LSDよりは速く、スピード練習よりは遅い速さ」
およそ、フルマラソンのレースペースに近い速さになりますが、レースペースより遅い速さでは行わず、遅くてもレースペースと同等からそれ以上の速さで行います。
フルマラソンより短い距離を走り切るわけですから、そのくらいの走力がなければいけません。
(※ただし、レースまでの期間が長かったり、走る頻度、ロングペース走の頻度も十分にある場合には、全体の計画のバランスがとれていればレースペースより遅いペース設定もありえます。)
距離・速さの具体的な設定
計画
具体的には、本番前までに最終的にめざす走力を見据えた上で、そのシーズンのロングペース走の何回目か、レース本番までにあと何回行うかによって決められます。
最初は余裕をもてる20kmを行い、そこから距離、スピードを徐々に増してゆきます。
■30km走:レースペースより速い設定で30kmを、余裕をもって走り切るところを目指します。30km通過(=到達)時点で、あと12km走る余裕が必要ということです。
■20km走:マラソンの持久係数に基づき、ハーフマラソンのタイムを参考にします。
<ハーフの目標記録=フルマラソンの目標記録÷2.14>
【持久係数(ここでは2.14)を用いたハーフマラソンの相応記録】
1km速さ | 1km速さ | ハーフの相応記録 | 1km速さ |
---|---|---|---|
3時間00分 | 4分16秒 | 1時間24分7秒 | 3分59秒 |
3時間30分 | 4分59秒 | 1時間38分8秒 | 4分39秒 |
4時間00分 | 5分41秒 | 1時間12分9秒 | 5分19秒 |
4時間30分 | 6分24秒 | 2時間6分10秒 | 5分59秒 |
5時間00分 | 7分07秒 | 2時間20分11秒 | 6分39秒 |
ロングペース走計画(フルマラソン3時間30分目標の一例)
計画は本番に向けて順調に仕上がっているかどうかを常に考えるうえで大事ですが、各回を実施するにあたっての速さ・距離の設定は、計画よりも、前回までのロングペース走を中心とする実績走力に基づいて決められます。
上記のような計画を立てて、毎回(毎週)その通りにゆけば次週も計画通りに実施すれば良いのですが、計画通りの結果が出せなかった場合はどうするか?
むしろ、そのとおりに行かないことの方が多いのです。次回(次週)以降の計画をいかに修正してゆくかが重要です。
だからこそ、トレーニング計画は再構築をしやすいように詰め込みすぎず、予備日を含めて余裕を持たせて作ることが肝心です。
余裕を持たせるには、本番までのトレーニング期間は長いにこしたことはありません。
もしも自己ベストを目指しているならば、こなせないメニュー(=レベル)に当たってしまうのはむしろ当たり前と思いましょう。
もう少しのところで届かない場合・・・例えば最後の5kmだけうまくゆかなかったり、ペースの出入りが激しく少しだけショートしてしまった場合などは、同じメニューへの再チャレンジでも結構です。
それ以外の場合は、前のレベルに戻って走力を確信するトレーニングを重ねるか、レベルを少し下げて行います。
- 例えば、9週間前の20kmメニューがこなせなかった場合は、その前の20km走(=11週間前)のメニューをもう一度繰り返すか、[4分45秒→4分45秒→4分40秒→4分40秒]というメニューを行います。
- 例えば、7週間前の30kmメニューがこなせなかった場合は、1週前の20km走(=8週間前)をもう1回行うか、その前の30km走(=10週間前)のメニューをもう一度繰り返すか、あるいは[5分55秒→5分55秒→5分50秒→5分50秒→4分45秒→4分45秒]という30kmメニューを行います。
こなせていないのに次のステップ(=レベル)に進むのはNGです。
ロングペース走のトレーニングは、
こなしたことのある負荷(メニュー)を重ねて走力基盤をより強固にする(確証)か、こなせるであろう少しのレベルアップ(小挑戦)のどちらかです。
地道な負荷設定のロングペース走とスピード練習とLSDの三位一体が、着実に走力を向上させます。
計画がまったくこなせない場合は、そもそも走力の把握において高く評価しすぎているか、目標が高すぎるか、トレーニング期間が短すぎているかのいずれかです。
目標や計画を見直しましょう。
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