※このレクチャーは、マラソン等長距離走においてレース完走や自己記録の更新または維持という走力向上を目標においている市民ランナーを対象としたものです。
前回は週2回の場合のメニューとして、二つの必須メニュー(ロングペース走とLSD)を定期的に行えるように、そのどちらかを1回と繋ぎのショートペース走やジョグのどちらかで週2回を構成する基本とアレンジを紹介しました。
今回は週3回の考え方です。
週3回の場合のトレーニングメニュー構成(1)
二つの必須メニュー(ロングペース走とLSD)の入れ方
二つの必須メニューを定期的に行うようにスケジューリングするのが基本ですが、かといってその二つ(ロングペース走とLSD)を1週間に両方入れることはいたしません。
週3回以内の多くの市民ランナーにとって、ロングペース走(レースペースを意識した速さでの20km以上 )とLSD(およそ少なくても2時間30分以上)で3回のうちの2回が占められることは、負荷の高いトレーニングの割合が高すぎて故障やオーバートレーニング症候群的な(具体的な発痛は無いがトレーニングパフォーマンスが上がらないような)リスクが高くなるのでお勧めできません。
週末の土曜日と日曜日の連続でこれらを行っている方も少なからずいらっしゃいますが、どちらかあるいはそれぞれのパフォーマンスやコンディショニングに影響を与えやすくなります。「疲労は次の練習に持ち越さない」のが基本理念の一つです。
前置きが長くなりましたが、上記をふまえて週3回のメニューは次のように提案します。まずはA案。
【A案】ショートペース走を入れて
(1週目)ジョグとショートペース走とロングペース走
(2週目)ジョグとショートペース走とLSD
(3週目)ジョグとショートペース走とアラカルト
これの繰り返しです。
これらメニューの中においてジョグはつなぎの役割です。ショートペース走はスピード練習でもないし中途半端に見えるかもしれませんが、意識と課題の持ち方で光り輝く練習メニューになりえます。毎回、距離・時間・速さ・心拍数のデータをきっちり取って次回の負荷を工夫しながら地道に右肩上がりさせてゆくことがポイントです。
次にB案は、スピード練習を入れた案。
【B案】スピード練習を入れて
(1週目)ジョグまたはショートペース走とスピード練習とロングペース走
(2週目)ジョグまたはショートペース走とスピード練習とLSD
(3週目)ジョグまたはショートペース走とスピード練習とアラカルト
これの繰り返しです。
私の考え方ではスピード練習は概ね最大心拍数の85%以上でトータル3km以上、10km未満走る練習で、インターバル走、レペティション、ビルドアップ走などのメニューが該当します。
スピード練習が入りますので、ショートペース走は毎回の結果を右肩上がりすることにこだわらず、つなぎ寄りの練習として位置付けるかジョグにした方が良いかもしれません。
スピード練習は慎重に
A案とB案を比べた場合、スピード練習が入っているB案の方が効果的で良さそうだと思われるかもしれませんが、どちらが効果的かはナンセンスな考察です。
大事なのは今までの練習計画・メニューの内容と走力を考慮したうえで、無理なくスムースに導入できるように構成することです。
「速くなりたい」「スピードを磨かねば!」「速い人はインターバル走を行っていることが多い」・・・新たにスピード練習としてインターバル走を導入したくなる気持ちはわかりますが、速い人の練習頻度や距離、速さの中におけるインターバル走の割合や位置づけと、自身のそれを比べてみてください。
まずは毎週きっちり行えないと意味がありませんし、(スピード練習は、やるなら毎週、かといって週1回まで!)
これまでの練習内容に比べて負荷が高すぎると故障のリスクが高まります。
科学的な根拠のない、指導経験からの話で恐縮ですが、フルマラソンで4時間台後半から完走をめざされる方にとっては、いきなりインターバル走をするのではなく、ショートペース走やビルドアップ走で距離や速さを右肩上がりにしていってスピード練習へ移行すべきと考えます。
指導者の多くは陸上部の経験を持っている方が多いですから、経験から定番のインターバル走を勧めることが多いと思われます。もちろん珠玉の練習メニューですが、市民ランナーの身体、年齢、練習頻度、時間、量から考えるとリスクが高いです。慎重に導入しましょう。
ビルドアップ走についても別の章で説明いたします。
次回の予定は、週3回のメニュー構成(2)として、フォーム改善、アップダウン走、コンバインドトレーニングを組み入れた案を紹介する予定です。
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