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マラソントレーニング計画・メニューー22 トレーニングの精度 正確な速さ(2)

快体健歩、効果的なマラソントレーニング22

※このレクチャーは、マラソン等長距離走においてレース完走や自己記録の更新または維持という走力向上を目標においている市民ランナーを対象としたものです。

正確に走る(前回レクチャーのおさらい)

マラソントレーニングの速さの設定やレース結果の分析において求められる細かさ、正確さはどの程度について、前回のレクチャーでは可能な記録更新幅という観点から導いてみました。

キロ5秒をフルマラソン距離に換算してみると・・・

5秒×42.195km…約211秒(3分31秒)

キロ5秒は約3分30秒の差
キロ10秒は約7分00秒の差
10秒、5秒にこだわりましょう!

「キロ5秒にこだわる!10秒違うと別レベル!!」くらいの意識が欲しいです。

キロ10秒、5秒にこだわって正確に走ることの重要性について、今回は運動生理学の観点から説明します。

運動生理学の観点から

下の図は600m毎に速さをキロ10秒ずつ上げて走った場合の(ビルドアップ式)、心肺にかかる負荷の推移の一例を表しています。コンコーニテストと言います。横軸が速さで、縦軸はその600m間の平均心拍数です。

この結果では、各速さ間の平均心拍数の差が最も大きいところは、5分20秒・139bpmから5分10秒・148bpmの間の9ポイントですから、139bpmを無酸素性作業閾値(AT値[Ananerobic Threshold])と考えることができます。
139bpm未満の速さでは5分40秒から5分30秒の間の6ポイントが最大で、遅いほどに10秒の差が身体に与える影響は小さくなりますが、139bpm より上の領域に入ると筋肉のエネルギー消費に必要な酸素供給が追いつかなくなり、血液中の乳酸が急激に増加し始めることになります。主観強度では「キツイ」と感じる境目に相当します。
およそフルマラソンをイーブンペースで最も速いフィニッシュタイムで走った場合の平均心拍数はAT値より低いという考え方もあります。これに基づけば、事例のランナーがフルマラソンで持てる力を十分に発揮できるペースとして5分20秒は妥当ですが、ほんの10秒速い5分10秒ではオーバーペースで失速につながる恐れがあると言うことができます。

トレーニングにおける10秒、5秒のこだわり

レースのペース戦略だけではなく、トレーニングにおいてもペース設定において5~10秒の差にこだわることは、練習の成果、効果にとても重要です。

マラソンレースを意識したペース走ではAT値付近で走ることになりますが、わずか5秒の違いで20㎞走はできても30㎞はできなかったりすることになります。逆に余裕がありすぎても、狙った成果・効果は得られません。
ペース走の距離やスピード練習の距離やセット数に応じて、10秒、5秒にこだわりましょう。

LSDなど脂肪酸化能力を上げるためのトレーニングでは、最大心拍数の60~70%の負荷で長い時間を走りますが、「走れるから」、」「爽快だから」、「早く終わらせたいから」といった理由でうっかりペースを上げてしまうほどに目的とした脂肪酸化の能力は得にくくなります。心拍計でチェックしながら走るのが一番ですが、速さ(ペース)をチェックしながら走る場合では10秒、5秒にこだわりましょう。

トレーニング計画・メニューの設定段階からこだわる

「10秒、5秒にこだわる」と言い続けてきましたが、走っている実践中に限りません。実践中にチェックするということは、スタートの前に、今日のトレーニングのテーマ(何を向上させるかあるいは疲労抜きか)と、目的(維持・反復かチャレンジか)レベル(今の自分にとってのストライクゾーンの速さ)が明確であるということにほかなりません。
「5分で走ろうか、5分半で走ろうか?」などと迷っていたり、「走り出してから考える」、「他者に合わせる」といったりしているようでは、同じ時間や距離のランニングでも得られる走力向上のトレーニング効果が十分得られなかったり、速い方に振れすぎると故障のリスクにもつながります。

速く走れるようになるには、速く走ることではなく、正確に走ることです。
やみくもに上のレベルにチャレンジすることではなく、少しの頑張りでできる範囲を正確に把握して重ねることです。

ペースメーカー、グループ分けの利用について

ペースが30秒刻みでしかない団体練習などでは、今の自分にピッタリなペース設定であるとは限らないので、無理や妥協を生んでしまうのがデメリットです。ランナーの走力、トレーニング負荷のストライクゾーンは30秒刻みではないのです。
もちろん、団体走には個人走に無いメリットもありますが、これらのことを踏まえて了解の上で上手に利用しましょう。

レースにおいても同様です。ペースメーカーに終始しっかり付いて走ったり、部分的にでも共走してペースキープに利用したりすることで目標記録の達成に至るというのが最大の利点ですが、そもそも自身の走力の把握や目標がアバウトなままで付いてゆくことは、オーバーペースからの大失速になりかねません。

多くのレースでは、区切りの良い30分刻みのペーサーが配置されますが、30分の差はキロ約42.7秒の差です。10秒ですら別レベルと考えたいところですから、42秒間隔にちょうど当てはまらない場合の方が圧倒的に多いはずです。「いけるところまで・・・」と安易にペースメーカーについて行かないようにしましょう。
フルマラソンではキロ10秒の差がフィニッシュタイム約7分ですから、7分刻みにペーサーがいてくれると親切?といえるのかもしれません・・・。

快体健歩、効果的なマラソントレーニング22

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